㈱グローバル開発経営コンサルタンツ
専務執行役員 中小企業診断士 玉井 政彦

 

1. 日系ブラジル人の日本への出稼ぎ比率は非常に高い
連載第2回目も前回に引き続き、日系ブラジル人に焦点を合わせます。時は遡りますが、1980年代後半より始まるブラジルの不況が原因で、「日系ブラジル人」が大挙して日本に出稼ぎに来るようになり、常時30万人近くが日本での出稼ぎ状態を続け、ブラジル日系社会では「ブラジル日系社会が空洞化」していると言われるほどでした。

日本側ではブラジル人子弟の教育問題、それに伴う非行が社会問題になるなど、日本とブラジル両国に問題を投げかけていました。リーマンショック後、「日系ブラジル人」の日本国内登録者数は減少しているとはいえ、「日系ブラジル人総数」に占める比率は非常に大きなものがあります。それも、青壮年層の日系ブラジル人がブラジルを離れているわけですから、ブラジル日系社会へのインパクトは大きいものがあると思われます。さて、前後しましたが、「日系ブラジル人総数」がどれほどかを、ご存知でしょうか?一般的には150万人と言われています。実に5人に一人の日系ブラジル人が日本に居住していたことになります。

 

2. 日系ブラジル人がサンパウロ州、特にサンパウロ市内に多い背景
日系ブラジル人の人口統計は、サンパウロ市内に在る「サンパウロ人文科学研究所」(略称「人文研」)が「日本人ブラジル移住80周年」の記念行事として、1987年7月に調査した「日系人口動態」の報告書が、本格的調査として実施された最後のデータとなっています。その当時の日系人口は、1,228千人となっています。その内、サンパウロ市内に326千人、サンパウロ市を除くサンパウロ州内の「その他地域」の人口が561千人となっています。要するに、サンパウロ市を含むサンパウロ州全体(887千人)に、当時、全日系ブラジル人(1,228千人)の実に72%以上が居住していたことになります。その中でも、サンパウロ市内の日系ブラジル人の比率の大きさには注目すべきです。

どうしてサンパウロ州に日系人が多いのか?それは、日本人移住者が入植した歴史的事実と切り離すことができません。ブラジルは、アフリカ人を奴隷として酷使していた「奴隷制度」を1888年(明治21年)に廃止したことから、その代替労働力を、ヨーロッパ諸国を中心とした海外に求めていました。日本からの移民者は、サンパウロ州内に散在するコーヒーなどを産する農場の雇用移民として農業労働に従事し、蓄財して数年後には日本への帰国を夢見た「出稼ぎ」でした。ところが現実は厳しく蓄財もできず、サンパウロ州の地方で農業労働に従事していた日系ブラジル人の多くは子弟に高等教育を受けさせようと、サンパウロ市内に移住し、商業活動に従事するようになり、サンパウロ都市部での人口比率を高めていくことになったようです。

<連載第2回おわり>